日本とアメリカの保険制度の違い
アメリカの健康保険・医療請求のしくみは日本とは大きく異なります。
日本の保険制度について
日本では、国民皆保険制度で、原則的にすべての国民が公的医療保険に加入しています。自分の選んだ病院に行き、医療を受け、病院に支払う医療費はどの病院も一律です。保険内で治療を受けた際、窓口で支払う自己負担は一般的に3割と決まっており、診察が終わると窓口で支払いを済ませると、患者の支払い手続きはすべて完了します。
アメリカの医療保険制度について
アメリカでは、国民全員が健康保険に入っているとは限りません。それぞれ民間保険会社と直接契約し保険料を納める、もしくは雇用主の用意した会社の団体保険に加入します。公的医療保険もありますが、高齢者・低所得者・障がい者の方のみ加入できるという限定的なものです。
駐在員やその家族の方は会社が用意した保険に入ると思いますので、保険未加入ということにはならないと思いますが、加入している保険・プランによって自己負担額が異なるので注意が必要です。
一般の方が加入するのは、民間の保険会社ですので、さまざまなプランが存在し、保険料も異なります。厄介なのが、保険会社によりネットワークを持っており、そのネットワーク内の病院でないと保険でカバーしてもらえないということ。つまり、行きたい病院があっても、入っている保険会社と提携していなければ、基本的に行けない(高額な医療費を自己負担するという手もありますが)ということです。しかも、アメリカの医療機関は医療費を自由に設定できるため、とんでもない額を自費で払うこともあり得るのです。そのため、ほとんどの人は自分の保険のネットワーク内の病院を受診することになります。
アメリカで保険給付を受ける際の一般的な流れ
医療機関を受診する
1.保険会社のネットワークを確認する
まず、医療機関を予約する前に、その医療機関が保険会社のネットワーク内(イン・ネットワーク、イン・ネットワーク・プロバイダー)であるかどうかを調べます。保険会社のサイトやコールセンターで確認しましょう。
イン・ネットワーク(イン・ネットワーク・プロバイダー)
保険会社のネットワークと契約している医療機関や医者など。保険適用される範囲が広く、クレーム申請(後ほど説明します)も不要、医療費の自己負担が安く済む。
アウト・オブ・ネットワーク(アウト・オブ・ネットワーク・プロバイダー)
保険会社のネットワークと契約していない医療機関や医者など。自分でクレーム申請をすることで保険適用される場合もあるが、医療費の自己負担が高額になる。また、保険会社の規制を受けず医療費を自由に設定・請求できるため、高額請求が来る恐れがある。
2.医療機関に電話で予約する
医療機関に予約を入れる際、自分が加入している保険を告げる必要があります。保険会社だけでなく、プランも伝えると安心です。
治療に携わるすべての医師(執刀医だけでなく、麻酔医や検査技師なども含めて)・医療機関(病院・検査機関)すべてがイン・ネットワークであることを確認する必要があります。
病院はイン・ネットワークだったが、担当した医師がアウト・オブ・ネットワークだったため、請求された医療費が高額だったというケースもありますので、注意してください。
3.医療サービスを受ける
医療機関にチェックインする際には、必ず保険会社が発行するIDカードを提示します。
余談ですが、訴訟大国のアメリカだからか、初診の際に何枚もの書類に記入やサインする必要があるため、早めに行くことをお勧めします。
4.会計はしない
窓口での支払いは基本的にありません。後日請求書や明細が送られてきます。
★例外:窓口で支払いがある場合
Co-pay(患者の定額自己負担額)が適用されるサービスを受けた場合にはCo-payのみ支払いが必要です(安心してください、筆者の場合、窓口で支払ったCo-payの最高額は15ドルです)。Co-payを支払った場合は残りの医療費はすべて保険給付されます。
Co-payが適用されない医療サービスを受けた場合はCo-Insurance(患者の定率自己負担額)を支払うことになりますが、窓口で支払うということはなく、後日プロバイダーから請求書を受け取り、保険給付明細書(E.O.B.)と請求額を照らし合わせて送金します。(この際、高額請求などがあれば保険会社に確認することができます。正確な自己負担額が計算され、確認できるまでは支払ってはなりません。(筆者は250ドル払う必要のない出費をしたことがあります、返金されませんでした)
クレーム申請(保険給付申請)をする
イン・ネットワーク・プロバイダーを利用した場合
イン・ネットワーク・プロバイダーを利用した場合は、医療機関が手続きを行いますので、患者がクレーム申請をする必要はありません。
アウト・オブ・ネットワーク・プロバイダーを利用した場合
Co-Insuranceに加え、R&C/MRC(地域標準治療費:アウト・オブ・ネットワークを利用した際に適用される価格で、保険会社の規制を受けるイン・ネットワーク・プロバイダーに対して高額に設定されている)を超える額は自己負担となります。基本的に窓口で全額立て替え払いをし、後日、保険会社へクレーム申請をします。(プロバイダーによっては、全額立て替え払いの必要がなかったり、クレーム申請を代行してもらえる場合もあります。その際はプロバイダーからの請求書が届くまで待ち、E.O.Bと照らし合わせて確認の上で支払ってください。
★注意点
プロバイダーからの請求書については、E.O.Bが発行されて正確な自己負担額が確認できるまでは支払ってはいけません。
★クレーム申請の方法
プロバイダーからItemized Bill(治療内容・治療費明細書)を手に入れ、クレームフォーム(各保険会社のHPから入手できます)とあわせて提出します。その際、書類一式のコピーを控えとして保管しておくことをお勧めします。
医療保険用語
最後に
日本人駐在員向けに会社が加入している保険の場合、保険会社に日本語対応のデスクが設置されている場合がほとんどです。
受け取った請求書に不明点があったり、請求が高額であった場合はすぐに支払ったりせず、保険会社に問い合わせを行いましょう。医療機関に確認するよう指示される場合もありますが、確認する要点などを相談しておくと、その後スムーズに手続きを進めることが出来ると思います。